巨人の二軍(ファームチーム)本拠地「読売ジャイアンツ球場」。
1985年より現在まで、数多くのファンを迎えている歴史ある球場の球場長を務めるのは、かつて巨人でキャッチャーとして活躍し、コーチも歴任された藤田浩雅さんです。
ジャイアンツ情報局では今回、藤田球場長へのインタビューを実施。
球場長の業務や球場の魅力、二軍観戦のポイントまで、たっぷりうかがいました!
選手・コーチ・職員を経て球場長に就任
1983年に阪急ブレーブス(現・オリックス・バッファローズ)入団。
1992年から1996年まで巨人でプレーし、現役を引退された藤田さん。
現役引退後は二軍コーチ、スコアラー、ブルペンキャッチャーなどを歴任し、2006年からは主に球団職員として、巨人一筋で業務にあたられています。
藤田浩雅球場長(以下、藤田球場長) 「職員としての業務で印象深いのは、ファン事業部の仕事です。
2013年から6年間、球団オリジナルのベースボールカードの作成や、各種イベントを扱いました。
東京ドームでの一軍選手のトークショーだったり、地方遠征でイベントを開催したりするのですが、そういった場への出演を選手にお願いすることが多くて、なかなか気を遣いましたよ。
ブルペントークショーだったらベテランと若手選手や仲の良い選手同士、地方遠征なら地元の選手を選ぶなど、いろいろと考えながら人選していました」
熾烈なリーグ戦を繰り広げるシーズン中。
チーム状況や各選手の調子を加味し、なおかつファンに楽しんでもらえるイベントを開催できていた裏には、藤田さんの影の努力がありました。
藤田球場長 「常日頃から選手たちに声をかけるように心がけていました。
『前の試合、ナイスピッチングだったじゃん』、『今度、頑張れよ』とか、話しかけると選手も答えてくれるので、普段のそういった会話から関係性を築いて、出演の交渉をしていました。
現役時代はキャッチャーで、いろいろなピッチャーとコミュニケーションをとらなくてはならないポジションなので、その経験が活きたところもあると思います」
選手、コーチ、球団職員と多様なポストを経て、今年から球場長になられました。2011年から2012年まで寮長兼球場長を務められていたので、今回はいわば“第二次球場長”です。
藤田球場長 「昔は寮長が球場長を兼務するのが慣例だったのですが、私のあとから別々になりました。
今年からまた球場長に就任して、読売ジャイアンツ球場の施設管理をしています。
球場・室内練習場は大きな施設なので、緊急対応を要することがときどき起こります。
二度目とはいえ球場長になりたてなので、そのたびにいちいち『どうしよう?どうしよう?』と慌ててしまいますね。
ひとつひとつのことに慣れていっているところです」
率先して現場へ!背中で伝えるホスピタリティ
『まだなりたて』と謙虚に語る藤田さん。しかし、新球場長の就任による好影響が早くも現れているようです。
藤田球場長「球場長になる前から、業務で読売ジャイアンツ球場に来ることが割とあって、『球場の周りが少し汚いな』と感じていました。だから自分が就任したらキレイにしたいと思って、先日も草刈りをしましたよ。駐車場のあたりに雑草がたくさん生えていたので、刈っていたら4時間近くかかりました(笑)。暑くなるとどんどん生えてくるので、草刈りは頻繁にやらないといけません。私は手で刈るので体力的になかなかハードですが、キレイになると嬉しいものです」
草刈りをはじめ、グラウンド整備は本来、グラウンドキーパーの役目。それでも球場長が率先して業務にあたることで、球場の景観に加えてスタッフ陣の意識も高まっていきます。
藤田球場長「当然、グラウンドキーパーたちも草刈りはしてくれますが、なにしろ範囲が広いものですから、自分でもやるようにしています。すると、別のところをキーパーたちがやってくれたりして。命じるのではなく、『球場長がやっているから僕たちもやろう』と自主的に動いてくれるような環境にしていきたいですね」
より快適な球場を目指して日々業務にあたる藤田さん。選手のことを一番に考えるホスピタリティが、グラウンドでのベストパフォーマンスを支えています。
藤田球場長「選手が気持ち良くプレーに専念できるように手助けすることが、私たち球場スタッフの仕事です。雑草がボーボーに生えているより、キレイに刈られていたほうが当然、気持ち良いですよね。スタンドの階段なんかも、選手はグラウンドからスパイクでそのまま上がるので土が落ちます。いくら掃除してもすぐ汚れてしまうのですが、なるべくキレイに保てるようにして……。設備の整備、清掃は毎日のことですね。ほかにも選手から何か要望があればすぐに対応します。喜んでくれるので働き甲斐がありますよ」
来場者への対応も、球場運営の大切な仕事。快適に観戦、応援できる環境づくりへの工夫が、読売ジャイアンツ球場では随所に見ることができます。
藤田球場長「夏の試合は、お客さんが熱中症になってしまう危険があるので注意が必要です。球場には屋根がなくて、コンクリートからの照り返しも強い。暑さでアルコールが進んで体調を崩してしまうお客さんが結構いるので、夏場は『よしず』を設けて日陰をつくるようにしています。また、もしものときのためにグラウンド付近の控室のひとつを、救護室として使えるようにしてあります。エアコンを利かせて氷も用意して、しっかりと冷やしていただける準備を整えています」
打球音・捕球音が響く球場!観戦はいつもバックネット裏から
二軍が主に練習・試合を行う読売ジャイアンツ球場。そこには一軍がプレーする東京ドームとは一味違った楽しみがあります。球場長が考える、若手選手主体のチームを見る魅力とは?
藤田球場長「球場に足しげく通ってくださるベテランのファンもたくさんいて、そういう方々は『二軍の選手が成長していって一軍で活躍する姿を見たい』と。いわゆる、青田買いをしているわけです。読売ジャイアンツ球場では練習日や試合前後の練習時間もスタンドを開放しているので、練習風景までじっくり見ていただけますよ」
練習の内容や、打ち込む姿勢、コーチとのやり取りまで見られるのは、ファンにはたまらないものでしょう。その姿を追ううちに、お気に入りの選手が見つかるはずです。また、試合でのスタンドの雰囲気も、一軍とは違いがあるのだとか?
藤田球場長「一軍の試合は、ジャカジャカと鳴り物の応援が響きますよね。それも賑やかで良いのですが、二軍の試合は鳴り物がないので、打球音やグローブの捕球音まで聞くことができます。プロの音は迫力があるので、ぜひ耳を澄ませていただきたい。ホーム席とビジター席も厳密に分かれていないので、好きなところから選手たちを応援してください。三塁側のスタンドから巨人のベンチを見たりしているファンもいますよ。私はキャッチャーでしたから、投球の軌道なんかをしっかりと見られるバックネット裏が好きですね」
白熱の試合はもちろん、土日にはさまざまなイベントを開催するなど、充実のファンサービスでも人気を呼んでいます。また、選手との触れ合いも醍醐味のひとつ。
藤田球場長「球場の一番の特徴は、ファンと選手の距離の近さです。練習や試合の前後、合間には選手がスタンドを横切って歩いたりすることも多く、そのときにサインをもらえたり、握手をしてもらえたり、写真を撮ってもらえたり……。ファンと選手が接する貴重な機会になっています。現役時代に活躍した二軍コーチが多いので、コーチ目当てで来場して、声をかけている方もいらっしゃいますね」
とはいえ、選手に声をかけるのは気が引ける……。そんな控えめなファンの方にも、「どんどん話しかけてください!」と藤田さんは笑顔で語ります。
藤田球場長「自分から声をかけていったら選手は優しく対応してくれますよ。タイミングが合えばハイタッチやサインをしてくれるはずですから心配いりません。選手としても、応援してもらえるのは嬉しいものですから。最近では特に、マシソン選手のファンサービスが丁寧で印象深いですね。私もいまだにサインを求められることがあって、そのときはちゃんと書きますよ。球場長が書かないわけにはいかないでしょう(笑)」
《球場情報》
■球場名■
読売ジャイアンツ球場
■アクセス■
神奈川県川崎市多摩区菅仙谷4丁目1番1号
京王よみうりランド駅より徒歩10分
※土日祝はシャトルバスの運行あり。区間:京王よみうりランド駅から球場
■入場料金■
イースタン・リーグ公式戦の入場料金
大人1100円 子供(小中高生)400円
■開場時間■
平日:試合開始の2時間30分前に開場
土日祝:試合開始の3時間前に開場
非公式戦:試合開始の2時間30分前に開場
※11時試合開始の場合は午前10時に開場
詳細はこちらを参照ください